煙突の設置


はじめに
 煙突はいろいろな部材で構成されていますが、既製品として部材化されそれぞれの接合や取り付け・固定は精度の高い差込みとネジで留めることができるようになっておりますので設置は高度な技術を要する特殊な作業ではありません。ただし、周囲との離隔距離の確保や遮熱処理については事前にしっかりとした検討が必要です。
 つまり、今時ですから部材化されており、原理とルールを理解して守れば作業そのものは素人でも設置は可能です。
 熱や煙・タールそして屋外や閉じられた場所に設置されますので シンプル is ベスト 、簡素で無理のない形状の煙突が安全性が高くメンテナンスも楽です。
 当舎の場合はさらに独自にさまざまな部材を開発して簡単で安全強固な設置と煙突掃除などのメンテナンスを容易にしています。

ストーブは煙突と一体となって機能をはたしますのでストーブの配置は煙突の計画をふくめて決める必要があります。
 煙突の曲がりは煙の動きを妨げ、吸引力を低下させ、詰まりの増やします。
 使い手が自分で掃除ができないような煙突ではいずれはストーブを使わなくなるでしょう。

 煙突の配置
 
ストーブは煙突と一体となって機能をはたしますのでストーブの配置は煙突の計画をふくめて決める必要があります。
 煙突の曲がりは煙の動きを妨げ、吸引力を低下させ、詰まりの増やします。
 使い手が自分で掃除ができないような煙突ではいずれはストーブを使わなくなってしまうでしょう。壁抜きと屋根抜きについて
 煙突の設置方法については大きく分けて壁にメガネ石を取り付けてだす「壁抜き」と屋根に「屋根仕舞」などをつけて屋根にぬく「屋根抜き」の二つのルートがあります。「屋根抜き」のなかで四角いチムニーを設けてその中に煙突を通す「チムニー」があります。チムニーの先端は百葉箱のようなガラリのついた「角トップ」と通常の煙突を突き出す方法があります。

 屋根抜き 
ストーブを建物の中央寄りに配置すると壁に抜くまでの水平距離が長くなり屋根に抜くことが多くなります。屋  根抜きは煙突が垂直となり吸引は有利に働きます。しかし、屋根を抜く納まりを確実にしないと雨漏りなどの原因となりますので屋根勾配や屋根材との取り合いを考慮した方法を選択ししっかりとした施工が必要です。当然天井・小屋裏・野地板を抜きますので遮熱防火処置を施し、煙突は永久的な耐用はありませんのでその交換や廃止も考慮する必要があります。なおシングル煙突での屋根抜きは現実にはできません。
  位置は、雨・雪の量が多く雪溜まりなどの多い軒寄りより棟寄りが有利となります。
  煙突からのタールだけでなく煙が大気中の霧などと化合してできる酸化物で屋根が汚れたり腐食することがあります。一部業者が瓦屋根への施工などに鉛板を使用しているようですが腐食耐用性への疑問から当舎は採用していません。
  特に急勾配の屋根や必要以上に長く突き出した煙突は掃除などメンテナンスを困難にします。
  なお、既設建物の屋根を抜くのは工事の万全性からお薦めしておりません。

 

  壁抜き 
  壁抜きは通常壁に四角い穴を開け、そこにALCや珪藻土など不燃材のメガネ石をはめて水平に煙突を通し外部は掃除口付きT曲がりで垂直に上方向、室内はT曲がりまたはエビ・Rj曲がりなどで下方向でストーブに接続します。建物への負荷が少なく既設建物でも容易に設置できますがストーブの設置位置は壁際になります。
 ポイントは垂直方向の煙突長2に対し 水平方向の煙突長は1以内の比率で最長でも2m以内にしないと吸引力が落ちストーブの燃えも抑えられススなど詰まりが極端に多くなります。また壁抜きの場合は煙突掃除の回数はどうしても多くなります。しかし、曲がり部分に掃除口を作ることが出来ますから掃除は比較的楽でしょう。
  軒の深い家の場合垂直部分で鈍角の曲がりを入れて水平部分を少なくするなど工夫も必要です。軒先での固定は難しく特に積雪地では雪に押し倒されるので軒側ではなく妻側が有利となります。煙突の先端は必ず軒より60センチ以上高く伸ばします。
  なお、現在の法規ではメガネ石は煙突径より20センチ大きい□(φ150なら350□)となっていますがシングル煙突の場合はさらに大きな物とするほうが安全です。


  
 
 白い煙のなかの大半は水蒸気ですが 『水』ですから燃えません。どんなに自然乾燥をしても薪には重量で20%くらいの水分が残ります。 「桜のチップのスモーク ハム」をあげるまでもなく薪の煙には匂いがあります。どのようなストーブでもこの水分と煙の匂いを完全になくすことはできません。特に匂いは「香り」と感じるのか「臭い」ととるかに個人差があります。
  薪ストーブの排気温度は焚き始めの低温から巡航燃焼時の比較的高温まで幅があり、低温の煙は冬の低温無風自には周囲の建物にからむように漂うことがあります。
  マスコミが異常に煽ったダイオキシン騒動も実は薪などの煙はそんなに有害なものではないことがあきらかとなっています。
  とはいえ隣近所の煙は嫌なものです。
  後述しますが 建築基準法等では煙突は、屋根面から60センチ以上高く離すなど規定がありますが現実には不十分なだけでなくたとえ法規内であっても近隣からみれば不快なものです。 煙突の設置位置 形状、高さの選定には自分の建物だけでなく近隣への配慮をすることが大切です。
  大切なことは、技術や法律が不十分であることを率直に認めて 「法律を守っているからいいんだ」「薪ストーブは安全だ」などの傲慢ではなく、「私は暖かくて心地よいが、近隣には迷惑をかけているかもしれない」という謙虚な気持ちをもつことです。無理に都市部や密集地で薪ストーブを焚く必然性はありませんし、そのような権利も(すくなくも心がけとして)ありませんので。

煙突・煙の法規制
 薪ストーブと煙突の関する法律として建築基準法  同施行令115条や消防法 火災予防条例準則などがあります。
 しかし 一口で言えば、まだまだこれらの法規制を「守っているからと安心するとかえって危険」というのが実際です。なぜならば これらの法律、施行令、規則類は昭和20年代の台所のカマドや薪風呂釜、石炭ストーブを念頭にしたものに改正を積み重ねたものでまだまだ不十分なことが多々あります。
 例えば当舎では最低でも50センチ以上離すようにしているところも 基準法施行令の一般規定では「煙突は、建築物の部分である木材その他の可燃材料から15センチメートル離して設けること。」と低温炭化を考慮していません。法律では「防火上支障がないものとする。」とか「有効に断熱された構造にすること。」という言葉ですみますが、それを具体的にはどのような材料、工法ですれば安全なのかはまだまだ不十分です。 近年は基準法も性能規定化されてより実践的になりましたが、それでも法的規制はいわば最低基準です。
  建築家や建設業者もこうした法規制条文を知っていても具体的な建物に適合した工法に消化するところまで慣れていないのが実情です。
  私も20年以上薪ストーブに携わってくるなかでいろいろな相談をうけ事故を見聞きしています。幸い私の製作したものにはありませんが、その多くは低温炭化や煙道火災、煙などの基本的なメカニズムや原理を理解しないで法規やカタログ、マニアルを過信して設置したり施工したため事故になったりトラブルになったものです。
  もうひとつは、「うちのストーブの煙は海外の規制をパスしているから」などとカタログ性能を鵜呑みにして近隣への配慮を欠いた使い方や設置をしてトラブルになる例が多いことです。近隣関係にはなによりも「心」が大切です。
  石油、ガスのように厳格な規格と安定した品質の燃料を使用する器具と異なり、薪ストーブの場合は燃料である薪そのものが規格も品質も定めがなく薪を準備する人に頼るきわめて不安定なものであること、クリーンとか完全燃焼というカタログ性能も「もし最良の状態ならば」ということをよく理解することが大切です。
  例えば順調に燃えているストーブに薪を一本足しただけでも炉のなかの環境は変わり炉内の温度は下がり煙には白いものが混じります。

  こうした現実のなかで薪ストーブや煙突を設置するには、法規制やカタログ性能に頼らず それを越えたより安全性を考慮した十分以上の離隔距離や遮熱、断熱処置をして設置することが必要です。
  もうひとつは日々使う 使い手自身が薪ストーブ、煙突の特徴と危険そして設置状況を理解して使うことです。知っていることほど安全なことはありませんから。